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執筆者の写真坂本 慎一

『青天を衝け』第35回

渋沢栄一たちが、グラント将軍の来日に際して、盛大な歓迎を行ないました。アメリカの公人を私邸に招いて「おもてなし」をしたのは、これが最初と言われています。しかし、このできごとを大河ドラマで大きく扱うとは予想外でした。この接待は私企業の営利事業ではなかったので、公共放送という立場にあるNHKさんとしては、注目したかったのでしょう。

逆に栄一が関わった営利企業については、登場人物のセリフの中で一言だけ暗に示される、といった描写が続いています。たとえば第32回、和久井映見さん演じる母の「ゑい」との会話で、栄一が紙の大切さを語っていたのは、王子製紙の設立を暗に示していた、などなど。どうやら、こういう「細かすぎる企業紹介」という形で、栄一が関与した主な企業を、ところどころセリフに織り込んでいく趣向のようです。該当する会社の社員と、われわれ専門家だけが、ニヤニヤしながら見る展開になっています。

また、グラント将軍をなぜそんなに歓迎したのか、ドラマだけでは分かりにくかったと思うので補足します。グラント将軍は「おもてなし」の見返りとして、アメリカの情報も漏らしていました。日本のように後から近代化する国は、国債を大量に発行しようとするが、欧米の商人のカモにされるので気をつけた方がいい、と日本側に伝えたということです。日本政府は、こういう情報が欲しかったわけですね。栄一は、グラント将軍の「おもてなし」について、そんなに大した話ではないと後年言っていますが、大隈重信は、外交上大成功だったと言いました。大隈たち政府高官だけがニヤニヤできる何かがあったようです。

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