第1回「素直な心」研究会を開催
「松下幸之助の考えた素直な心」
川上恒雄(PHP理念経営研究センター首席研究員)
当研究センターの川上から、松下幸之助の「素直な心」についてご紹介しました。
2021年6月14日(月)オンライン開催
松下幸之助の「素直な心」を理解するには、宗教的な側面も考える必要があります。著書『素直な心になるために』には、「素直な心」の内容について10項目を挙げていますが、ここでは「私心にとらわれず実相を見極める」と定義しました。
松下の世界の認識の仕方は、「本来」と「現実」の2つに分けていたと考えます。「本来」の姿とは、宇宙根源の力から真理(=自然の理法)が生み出され、自然の理法が働いて宇宙ができ、私たち人間もそこから生まれます。自然の理法が働くことで、繁栄・平和・幸福の実現がもたらされます。そのためには、人間が「素直な心」になってものごとの実相をつかむことが必要不可欠です。「素直な心」になることで、企業活動や労働において宇宙根源の力から与えられているそれぞれの個性を活かし、繁栄・平和・幸福を実現することができます。これが「本来」の姿です。
しかし松下は、現実ではそのようになっていないと考えます。人間は高等な動物であるにもかかわらず、戦争のようにお互いに争ったりひどいことを平気でしたりしています。物質と精神の不調和が生まれると、人間は利害得失ばかりを考えるようになり、貧困、争い、不幸を生じさせると、松下は考えました。それを解決しようと打ち出したのが「水道哲学」でした。
では、どうすれば素直な心になれるのでしょうか。一つは「一万回願うこと」、もう一つは「自己観照」です。自己観照することによって素直な心になれるし、また素直な心になって自己観照をすることができます。こうしたサイクルを繰り返すことで、偏見とか思い込みを排除することができます。
「素直な心」になることは難しいですが、「素直になろう」と思うことは誰にでもできます。このように、普遍的な内容を持って、全ての人が取り組めるという点でも重要なテーマです。松下は「素直な心」を目指す人が増えれば社会が良くなり、戦争や貧困がなくなると考え、多くの人に呼びかけました。